さゆりさん1

さゆりさん

アトピー発症時期
高校2年生
一番悪かった時の状況
顔がふたまわりも腫れて大きくなってしまった状態
現在の状況
首や顔がたまに赤くなる、ひじの裏の乾燥

いつ頃から発症し、アトピーはどんな状況だったのでしょうか?

高校生の時、入浴剤で発症

さゆりさん2私がアトピーの症状を自覚したのは高校生のときです。いつもは使わない貰い物の入浴剤を使ったお風呂に入った後に全身が赤くなり、皮膚科に行きました。それまでも皮膚科に行ったことはありましたが、アトピーだと気づいたのはそのときが初めてでした。ただ幸い地元の良い病院へ親に連れて行ってもらえたので、ステロイドなしの薬で症状は落ち着いていました。

地元の大学に進学をしたので、そこまでは同じ医者のところで薬をもらっていました。乾燥があったり、たまに赤くなったりはありましたが、あまり酷い症状になった記憶はありません。

ステロイドを知らずに塗っていた社会人時代

大学卒業後は東京の会社に就職しました。なかなか地元にも帰れなくなったので、皮膚科を自分で探しました。自宅から通いやすい、という点だけで病院を選んだのですが、そこで出された薬がステロイドでした。仕事のストレスもあり、顔が赤くなることも増えたのですが「病院で薬をもらえば治る」と思っていました。当時の私はあまりに無知で、その薬の副作用なんてまったく理解していなかったのです。

さゆりさん3ステロイドの危険性について気づいたのは意外な場面でした。脱毛体験を予約し、カウンセリングの際にアトピーであることを申告したら「ステロイドは使っていますか?」と聞かれました。そのとき初めてステロイドという言葉を知りました。帰宅してからネットでいろいろ調べたところ、その副作用や恐ろしさを目のあたりにしました。さらに自分の使っている軟膏がストロングレベルのステロイドであることにも気づきました。

私が自分のアトピーとちゃんと向き合おうと思ったのはこのときが初めてだったと思います。自ら本やネットでアトピーのことを調べたり、脱ステロイドの病院を探して通い始めました。その病院ではアレルギー検査をして、その対処をしていく、というものでした。
私は花粉のアレルギー指数が高く、食品でもいくつか高いものが出て、ショックを受けました。

花粉の時期には特に気を付け、食事にも気を使うようになりました。

同時に保湿の軟膏(ひどいときはたまにステロイド入り)、顔にはプロトピックを使用していました。その頃から仕事が多忙になり、また仕事上のトラブルも多く、ストレスがかなりかかるようになりました。結婚して家事もやらなければ、という気負いもあったかもしれません。

仕事のストレスで悪化

そんなとき、仕事の大トラブルが続き、アトピーが最大級に悪化しました。顔の赤みはずっとあったのですが、ある日夜中に起きたら顔が腫れあがり、いつものふたまわりくらいの大きさになっていました。仕事のストレスが最高潮になったときでした。

次の日、皮膚科に行きステロイド軟膏を処方してもらいました。気持ちもかなり落ち込んでいましたが、仕事を休むわけにもいかず、マスクをしながらごまかして出勤していました。薬により腫れは引いていきました。ストレスとアトピーとの深い関係を、このとき実感することになったのです。

アトピーの状態が良くなったきっかけは何だったのでしょうか

生活改善でアトピーを治すことを知る

悪化した翌年、営業から内勤に移動となり、今までほどのストレスを感じることはなくなりました。ですが、恒常化されていた残業は減らず、一番気になっていた顔の赤みが引くことはありませんでした。当時病院からは小児用のプロトピックを処方されていましたが、ステロイドではないにしろ、この薬への副作用の疑問も持つようになりました。病院の方針も半年に1回のアレルギー検査の結果からただ薬を出すだけに思え、特に前進している気持ちにはなりませんでした。

さゆりさん4「このままではアトピーを治すことができない」と思い、ネットでアトピーを治すための方法を探しました。まず目に留まったのは「食事療法」。薬で治す、と思っていた私にとっては衝撃的な方法でした。食事がアトピーに関係するとは思っていなかったのです。ネットや本を参考に野菜中心、肉や米はとらない、という生活を行いました。そこで添加物の危険性などにも気づき、今まで気にしていなかった食品の表示などを注意深く見るようになりました。この食事で劇的な変化があったわけではないですが、アトピーと食事、そして健康について考え直す良いきっかけになりました。

会社を休職することで見えてきたもの

自分なりに試行錯誤しながら、大幅な改善が見られない中で出した結論は、「会社を辞める」でした。仕事は嫌いではなかったものの、人と対面で行なう仕事のため、どうしても自分の顔の赤みが気になってしまう。それがつらくて仕方ありませんでした。一度退職し、体調を改善することに専念したい、と申し出ました。当時の上司は理解してくれて、私に「休職」という選択肢を提案してくれました。

私はまずは3か月休んでみることを決めました。休んでいる間は旅行に行ったり、資格取得の勉強をしたり、やりたかったことに色々チャレンジしました。仕事のストレスがない状況のすがすがしさと少しのさみしさを感じました。いろいろ考えた結果、身体を大事にするには今の会社で続けた方がいいと思い、復帰することにしました。休職したことで周りへの理解が生まれ、早く帰れることも気にせずできるようになりました。

新しい病院との出会い

復帰してから繁忙期を迎え、顔の赤みが悪化し落ち込みました。ステロイドも使わざるを得ませんでした。この年の年末、アトピー治療で人気の病院へ診察の予約をすることにしました。この病院は大阪にありましたが、ちょうど東京で出張診察をしていたのです。ここで出された軟膏がとても身体に合っており、今でも使っています。

最初はステロイドが含まれている軟膏でしたが、徐々になしのものに移行していきだいぶ良くなりました。同時にサプリメントも処方されており、身体の中から変化があったのかもしれません。基本的にメールで軟膏などを注文するので、保険診療の適応外のため、通常の薬より高額です。負担はありますが、身体のために購入を続けています。

さゆりさんにとって、「アトピーが良くなるために大切だと思うこと」は何でしょうか?

医者は万能ではないことを知る

私は「皮膚科に行けば病気は治る」と思っていました。皮膚科に行って薬をもらってそれを塗れば肌はきれいになっていたからです。受け身だったこの考え方が間違っていることに気付くことができ、アトピー改善の一歩を踏み出せたと思っています。医者がアトピーを治してくれるのではなく、「自分で治す」という意識を持つことが大事だと思いました。食事や睡眠、普段の生活からアトピーの改善のきっかけを見つける方も多くいます。医者や薬がアトピーを治すのではなく、「自分の身体の中から治す」という考え方は、アトピー以外の病気であっても共通していると思います。皮膚科以外の病院で薬を出されても、必ず副作用を確認するようになりました。医者の言いなりではなく、自分で調べて行動することも必要です。

「アトピーで良かった」と思える気持ち

さゆりさん1最近になり、私はようやく「アトピーでよかった」と受け入れる気持ちが出てきました。アトピーだからこそ、毎日の食事に気をつけ、添加物などの危険性も認識することができました。もしアトピーでなければ今でもジャンクフードを好んで食べていたかもしれません。

たまに症状が出る時には「私疲れているんだな」という気持ちの表れだと思うようになりました。そう考えるとアトピーって便利かも、と感じることもできました。症状が悪化しているともちろん落ち込みますが、少しでも前向きな気持ちを持つことを意識しています。
今はキャリアカウンセラーの資格を取得し、私自身がキャリアとアトピーの関係でとても悩んでいた経験を活かし、アトピーの方のキャリアや心の支援がしたいと考えています。私がアトピーであったことが少しでも他の方の力になれるのであれば、アトピーの経験も悪くない。そんな風に少しだけ前向きにとらえることができました。
すぐには無理だと思いますが、アトピーで良かった、と少しでも考えることができれば、世界の見方は大きく変わってくると実感しています。

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2016年3月30日