さきさん

アトピー発症時期
生後2~3か月
一番悪かった時の状況
手足の関節とおしりの皮膚がビリビリに破けて、階段を上るだけで激痛の状態
現在の状況
頭皮、手足に若干発疹がある

いつ頃から発症し、アトピーはどんな状況だったのでしょうか?

「あれもだめ、これもだめ」時代

アトピーは生後2~3か月頃に発症しました。両親は私のために様々な治療法を必死になって調べ、試してくれました。車で5時間かかるところにある病院まで通ったり、しょうがをネットに入れてお風呂に入れたり、ツボを押したり……。

また、小学校低学年の頃まで厳しい食事制限もありました。砂糖や冷たい食べ物、添加物がアトピーを悪化させると聞き、おやつはいつも干しイモ、ジュースは野菜ジュースをレンジで温めてからでないと飲ませてもらえませんでした。友達が食べている色とりどりのお菓子やお弁当がうらやましかったです。

その頃は身体に包帯を巻いて寝て、朝起きると浸出液で布が皮膚にくっついているので、包帯を巻いた個所を洗面器のお湯につけ、痛みにぐずりながらゆっくりはがしてもらうことが日課でした。

もちろん私も辛かったですが、親も神経をすり減らしていたのが幼いながらにもわかりました。
今でも覚えているのが、夜中に母が布団から起き上がって泣いているシーンです。私がおろおろしながらティッシュを差し出すと、無言で受け取って涙を拭いていました。少し目を離せば血だらけになってしまうので、私が夜通し掻きむしる手を止め続けなければならず、寝不足で苦しかったのだと思います。

安心できるクリニックに出会う

転換期は小学校3~4年で自分たちに合ったクリニックを見つけられたときです。高校卒業までずっとそのクリニックに通うようになりました。

それまで、両親は「なぜ○○をしないんだ」「親がしっかりしないから子供のアトピーが良くならないんだ」と責められることも多々あったらしいのですが、そこのお医者さんは今までの治療法や生活習慣に対して否定的なことは言わず、「つらかったねえ」と優しくうなずいてくれる人でした。たまにステロイドが処方されることもありましたが、私たちの不安な気持ちを聞き入れてくれ、ステロイドを弱いレベルに変えてくれたり、別の薬を提案してくれたりしました。
その頃からアトピーの症状が落ち着いてきたように感じます。今思えば症状自体にそこまで変化はなかったかもしれませんが、厳しい制限がなくなったことで、精神面の負担が減ったのかもしれません。「アトピーが治らないのは私たちのせいだ」と自分を追い詰めていた親も、徐々に心の余裕を持てるようになっていったように思います。

周囲の目に悩んだ中高時代

中高ではお尻、手足の関節、冬場には目の上のカサつきに悩まされました。
私と同じクラスに、私より重度で、度々学校を休んでいるアトピーの女の子がいました。「フケをまき散らしてる」「汚い」等同級生に言われているのを見るたび、「自分も今より酷くなったら汚いもの扱いされるのだろうか」と思って怯えていました。

あるホームルームの時間、休んでいるその子の家に訪問してきたことを担任が話しました。訪問先で何か一悶着あったのか、担任はいらだった声で「あいつは甘えてんだよ」と言いました。
私はそこで、「ああ、アトピーの人ってただ単に『甘えている』ように見えるんだな」と、とても暗い気持ちになったのを覚えています。

高校でも大して症状は変わらず、椅子に座る時間が増えたからなのか、お尻のアトピーが悪化しました。この頃はステロイドを塗ってもだんだん良くならなくなってきました。

途中、突然唇の周りだけビリッと破けたような症状が出始めました。年頃だったため顔に症状が出るのが我慢ならず、毎晩手をひもで縛って寝ていました。それでも、治りかけの頃になると無意識にものすごい力で紐を引きちぎって顔を掻きむしってしまい、朝起きて絶望する……。そんな繰り返しでした。

高校3年の春に初めて彼氏ができました。しかしその頃調子の悪さがMAXで、毎日口の周りの傷を隠すためにマスクをしていました。彼氏にマスクを外されそうになると断固拒否し、自分の容姿に自信がなかったのでわざと冷たい態度をとっていたら、3か月も経たないうちに振られてしまいました。

当時はとにかく悔しくて悲しくて、「なんでこのタイミングで悪化したんだろう」とアトピーを呪っていましたが、今思うとアトピーである自分を相手にしっかり知ってもらって、前向きに受け入れてもらう努力を全然していなかっただけだなとも思います。

アトピーの状態が良くなったきっかけは何だったのでしょうか

環境の変化

今までアトピーが劇的に改善し、その状態が長期間続く体験をほとんどしてこなかったので、自分のアトピーが全体的に「良くなった」とは正直思っていません。でもいくつかかなり改善されたと思う症状もあります。

そのうちの一つが、お尻のアトピーです。
長野県の高校を卒業し、大学入学を機に上京し一人暮らしを始めると、小学校6年生の頃からずっと悩まされていたお尻のじゅくじゅくのアトピーが嘘のように消えました。

以前、アトピーサロンで「『掻破行動』を変えてアトピーを良くする」方法を紹介していただきました。自分が掻いている前後の行動を思い出し、その順番や行動自体を変えることで、掻く習慣を減らすというものです。私の場合は、引っ越し&一人暮らしという環境の変化によって、自分のお尻の掻破行動を変えることができたのかもしれません。

さきさんにとって、「アトピーが良くなるために大切だと思うこと」は何でしょうか?

きつい制限をかけない

小学校低学年までの、食事やなどに関するきつい制限がかけられていた頃と、好きなものを食べて好きに遊ぶようになってからのアトピーの症状を比べて、そこまでアトピーの状態に違いはないように思います。むしろ、「あれもだめ、これもだめ」と縛られていたときの方がつらかった記憶があります。

食事や生活習慣に気を遣うことで、前向きな気持ちになれるのは良いことだと思います。しかし、制限をかけることに固執すると精神的ストレスでかえって悪化したり、治らないときにひどく落ち込んだりしてしまいます。適度に息抜きをすることも大事ではないでしょうか。

「自分が治す」「自分が向き合う」意識を持つ

中高生の時は特に、「どうせアトピーだから」、「私なんて」という考え方からなかなか抜け出せないでいましたし、今も無意識にそう考えてしまっているときがあります。運動ができないのも、彼氏に振られてしまうのも、人から「暗い」と言われて嫌われるのも、全てアトピーのせいだ……。でも、アトピーのせいだと自分の身体を呪うことは、自分がアトピーと向き合うことに前向きになれるよう、自分で行動することより楽です。

アトピーと向き合うのは自分の親でもお医者さんでもなく、結局自分なのだと思います。

Pocket

2016年11月27日