みほこさん
- アトピー発症時期
- 社会人になってから
- 一番悪かった時の状況
- 脱ステロイドを試みた際に、全身から浸出液が出て寝たきりの状態
- 現在の状況
- ここ数年自覚症状はほとんどなし、季節の変わり目にたまにかゆみが出る程度
いつ頃から発症し、アトピーはどんな状況だったのでしょうか?
アトピーの悪化と苦悩
社会人になったタイミングで上京したのですが、学生から社会人になり、田舎から都会への引越しと環境が大きく変化しました。アトピーが発症したのは社会人1年目の夏でした。最初は肘の内側が突発的にかゆくなる程度で、特にアトピーという意識はありませんでした。
病院に行くとステロイドを処方され、塗るとすぐに治まりました。この頃はかゆみだけで、肌のダメージはそれほどありませんでした。当時営業の仕事をしていたのですが、ノルマの追い込みが近づいてくるとかゆみが増すので、もしかしたらストレス性のものなのかな?という思いがありました。
徐々にステロイドを塗るだけでは、かゆみのコントロールがきかなくなりました。点滴や注射を打つとしばらく効果が続くので、定期的に病院に足を運ぶようになりました。常にかゆいことで頭がいっぱいで、それがストレスになり、無意識に皮膚を掻きむしるといった負のスパイラルが進行していきました。それとともに、徐々に症状が全身に広がっていきました。
後で知ったのですが、点滴や注射はステロイド入りのもので、頻繁に常用してしまったことを悔やみました。会社では更衣室やトイレに駆け込み、あちこちを掻きむしるといった行為が習慣化していました。醜い私の姿を見た上司から「お前には都会が合わないんだよ。田舎に帰れ。」と言われました。その心無いひとことが、胸にぐさりと刺さり悲しくて涙が止まりませんでした。家族で集まると必ずアトピーの話になりました。
みんな熱心にアトピーに関する情報を調べ教えてくれました。試してみて効果がないと次の対処法を試すといったことを繰り返すうちに、「どうせ何をやっても治らない。もう私に構わないで。」と言ってしまいました。「私たちも必死なんだよ。でも、みほちゃん自身が頑張らなきゃ病気は治らないんだよ。つらいかもしれないけど頑張って。」と泣かれてしまいました。それまで自分一人が苦しんでいると思っていたのですが、家族もまた苦しんでいたのだと思います。
温泉治療での改善、そして悪化
家族の勧めもあり、思い切って仕事を辞め治療に専念することに。山梨にアトピーに効く温泉があると聞き、湯治を始めました。全身が赤くただれ、男か女かも分からないような状態だったのですが、混浴のお風呂だったため恥ずかしさもありました。温泉は水風呂だったのですが、雪の降る冬場にわざわざ寒いお風呂に入る人もいなかったのが幸いで、人目を気にせずに治療に専念することができました。
温泉に入っている間は痛みとかゆみから解放されるため、寒さも遠い道のりも全く苦痛には感じませんでした。3ヵ月の間1日も休まずに通ったのですが、すっかり回復したため湯治を終えました。こんなことならもっと早くやればよかった、と悔やみました。ところが東京に戻ってきて1週間もしないうちに再発し、1カ月後には元通りの状態まで悪化。
久々に友人と会う機会があると、醜い姿を見せたくなくてステロイドを使うといったことを繰り返すうちに、ステロイドが効かなくなっていきました。元々社交的な性格でしたが、人目を避けるようになりました。身内でさえもあまり会いたくないと思うようになりました。周りから、「大丈夫?」と心配そうに言われるのが辛く、できれば構わないで欲しいといつも思っていました。
脱ステロイドと絶望
いろいろと調べているうちにステロイドが良くないということを知り、脱ステロイドを試みました。今までで最も酷い状況が待ち構えていました。きっと好転反応と呼ばれるもので、ここさえ乗りきったらアトピーは必ず良くなるはずだ、そう信じていました。しかし待てど暮らせど回復の兆しは見えず、状況は悪化するばかり。
全身のかゆみと痛みで夜も一睡もできないので、徐々に体力も衰え寝たきりの状態になりました。リンパ液と血液で肌に衣服や布団がくっついてしまい、剥がすと激痛が伴うので、裸で体育座りをして一日を過ごすこともありました。こんな毎日が続くのなら死んだ方がマシだ。思考さえもネガティブになっていきました。数々の治療法や病院を転々とするうちに、何をやっても効きっこない。保険も効かない高額な治療費も足かせになっていました。私は何のために生きているのだろう。絶望的な状況でした。
アトピーの状態が良くなったきっかけは何だったのでしょうか
信頼できる先生との出会い
ある病院との出会いが転機となりました。その先生の考えは、体の歪みと食生活(=栄養素の不足)がアトピーに大きく影響しているというものでした。先生自身がアトピー患者だったこともあり、私の症状や不安な気持ちに熱心に耳を傾けて下さり、一つひとつ不安を取り除いてくれました。治療はもちろんですが、自分のことを分かってくれる人がいることがどんなに心強かったことか。また、病院に行くと自分よりも酷い症状の方がたくさんいたのですが、みんながアトピーと闘っている姿を見て恥ずかしくなりました。
病院に通うことでたくさんの仲間に出会い、徐々に気持ちが前向きになっていきました。また、ステロイド=悪と思っていたのですが、使い方が大事だということも学びました。精神面の安定とともに、さまざまな取り組みを始めました。まずは規則正しい生活と食生活の改善。起き掛けの白湯、腹八分目の食事、甘いものは控え刺激物は避ける、飲み物はジュースでなくお水に、シャワーではなく湯船に浸かる、身に付けるものの素材にこだわる、定期的な運動、便通をよくするためにプルーンを食べ、体を冷やさないような工夫をする、とにかく体のために良さそうなことは全部やりました。一進一退を繰り返しながらではありましたが、長期視点で見ると明らかに良方に向かっておりました。
ヘルスケア事業の立ち上げでさらに改善
私はIT企業で働いているのですが、3年前に会社が新規事業としてヘルスケア事業を立ち上げることになりました。それは、ハナビラタケというきのこの効能に着目したものでした。初めは社長に勧められたのがきっかけで、そのサプリメントを試してみることにしました。
半年経った頃から周りの人から、「アトピーだいぶ良くなったね」「首の色素沈着が目立たなくなったね」と言われるように。首の色素沈着が残ってしまうことはあきらめていましたが、私には効果がありました。それから3年が経ちますが、食事を含む生活習慣の見直しも相まってかアレルギーの数値も徐々に改善し、今ではアトピーということを忘れてしまうぐらい平和な毎日を送っています。
また、今までの人生は美容とは無縁の生活でしたが、この年になって初めて美容やおしゃれといったことを楽しめるようになりました。結局は日々の生活の中で口にするものや、肌に触れたりつけるものがいかに大事なのか、そういうことなんだろうなと思います。
自分にとって、「アトピーが良くなるために大切だと思うこと」は何でしょうか?
食生活と生活習慣の大切さ
アトピーで苦しんだ10年以上の年月は辛かったのですが、おかげで一生モノのプレゼントをいただいたと思っています。食生活と生活習慣、これは何よりも健康の基本だという当たり前のことに気付くことができました。日々の生活や食事の積み重ねが今の自分なのだと感じます。
アトピーの改善のために始めた諸々の習慣は、今も生活の一部となっており変わらずに続けています。気が付いたらアトピーだけでなく、便秘、冷え症、代謝、血管年齢、ダイエットとさまざまなところで体質改善が見られました。今思うと、悲鳴を上げていたのは肌だけではなく、身体全体だったんだなと感じます。
頑張りすぎないこと
「病は気から」と言いますが、なるほどなとあらためて思います。自分の心が折れてしまったらきっとダメなんです。心や体のSOSを感じたら、とにかく無理はせず頑張りすぎないこと。目先のことで一喜一憂せず、おおらかな気持ちで受け止めることが大事だと思います。
今はアトピーだということを忘れてしまっている自分がいますが、無理をし過ぎたりストレスがたまると軽い症状が出ます。完治とは言えませんが、これからもうまくアトピーと付き合っていける自信があります。
2016年3月1日